【Step1】IDCの基礎知識

データセンターはリスク分散すべき?一極集中の問題点について解説

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日本でもBCPへの関心が高まりつつある状況です。BCPとは「Business Continuity Plan」のことです。「事業継続計画」と訳されます。事業継続のために損害を最小限にとどめるための計画です。BCPの一環として、今回紹介するデータセンター(DC)のリスク分散が挙げられます。

1.何故データセンターの分散が必要か?

1.何故DC分散が必要か?

DC分散の必要性は、国も認めています。「デジタル田園都市国家構想基本方針」の中でもDC整備を盛り込んでいるほどです。地方へのDC建設の推奨や海底ケーブルの敷設に1,000億円もの補助金を出すとしています。なぜDC文差が必要なのか、いくつか理由があります。

1-1.リスク分散のため

もし自社拠点の近くにしかDCがなければ、震災などの自然災害に遭遇した際に同時被災してしまいます。すると拠点もDCもダメになってしまって、当面経済活動ができなくなる事態も十分想定できます。そこでリスク分散のために、データセンターを地方など別のところに設置する必要があるわけです。先ほど紹介したBCPの観点からも、災害時に企業が受けるダメージを最小限にできます。同時被災を回避することで、最短で必要最低限の陣容で事業復旧が可能になり、取引先の信頼感も増すでしょう。

1-2.バックアップ機能が稼働できる

自然災害が起こらなくても、データセンターで何らかの不具合の発生する可能性も十分想定できます。もし一つのところだけで運用している場合、不具合が発生すると復旧まで利用できなくなります。しかしもし地方にDC分散しておけば、メインがダメでもほかのところが稼働していればこちらを利用できます。このように万が一の時のバックアップサイトとして活用できるのも、DCをリスク分散したほうがいい理由の一つです。このように緊急時でもしっかり対応できる企業とアピールできれば、組織力の向上やブランドのイメージアップにもつなげられます。

2.関東地区のデータセンター一極集中・稼働率が逼迫する現状

2.関東地区のDC一極集中・稼働率が逼迫する現状

DCの現状を見てみると、関東圏に一極集中する傾向が見られます。一極集中によって、稼働率がひっ迫しつつあるのでDCのリスク分散が注目されるようになりつつあるわけです。

2-1.関東へのDC一極集中の現状

2022年1月17日、経済産業省と総務省が開催する「デジタルインフラ整備に関する有識者会合」の中間とりまとめについて発表しました。その中でデータセンターの環境における一極集中を問題点として取り上げられました。国内のデータセンターの状況ですが面積ベースで見た場合、2018年の段階で実に全体の6割が関東に集中しています。

関東に一極集中しているのは、必要な事情もありました。データセンターは迅速なレスポンスやトラブル発生時のスピーディな復旧など即応性が求められてきました。もし遠く離れた地方にDCを設置してしまうと、即応性のニーズに対応できない恐れがあります。またDCでは高性能なコンピューターを大量に動かす必要があり、それなりの電力が必要でした。十分な電力を供給するとあると、都心近くにDCを設置する必要がありました。しかし一方でリスク面も注目されるようになりました。それは災害リスクです。

この状況が続き、もし首都圏で何らかの大きな災害が発生した場合、データ処理を円滑に進められなくなるかもしれません。DCそのものはしっかりした地盤に作られていても、電力網や通信網がズタズタになれば機能しなくなります。場合によっては首都圏が被災した場合、行政や交通、医療、金融あらゆるサービスが機能しなくなって、日本全国で日常生活に支障をきたす恐れがあるわけです。

2-2.ネットワークの効率性にも問題

DCが東京に一極集中していると、通信ネットワークの運用効率も悪化します。地方にはDCが少ないので、地方のデータをいったん東京のDCに送信してそれが地方に戻ってくる形にならざるを得ません。同じエリア内で情報処理ができないと、どうしても非効率的になってしまいます。

確かにインターネットエクスチェンジが都心にある場合が多いので、ユーザー企業の拠点に近いところにDCを構築するのはメリットもあります。しかし東京への一極集中は上で紹介した問題点をはらんでいることも併せて認識しなければなりません。

3.国のデータセンター地方分散化の呼びかけ

DCの地方分散化については、国も積極的に推進するよう求めています。しかしDCの分散化を進めるといってもハードルがあります。特に問題になるのがコストの問題です。東京に一極集中しているのは、経済的な合理性があるからです。分散すればリスクマネジメントできる半面、分散化すれば調達コストはどうしても増大します。またシステムも複雑になるので、専門的知識を持った人が運用を担当しなければなりません。このような障壁をクリアするために具体的にどのような呼びかけを行っているのか、以下にまとめました。

3-1.データセンター立地の分散化を助成で後押し

先ほども紹介したように2022年に「デジタルインフラ整備に関する有識者会合」の中間とりまとめが公表されたのを受け、政府は「デジタル田園都市国家構想」の一環として、DC立地の分散を後方支援する取り組みを発表しました。まずDC設置事業者を対象にした、500億円規模の助成事業です。DCの電力や通信インフラや用地購入など整備のために、526億円もの予算を投入するとしています。さらに総務省では2021年度の補正良さで情報通信ネットワーク産業協会を補助金執行機関としたデジタルインフラ整備基金を新たに設置します。こちらの基金にも500円の予算を投資しています。情報通信ネットワーク産業協会は対象事業を公募して、基準を満たした事業を助成していきます。こちらの助成事業ですが、2025年度まで実施する予定です。これらの施策を見ても、政府がいかに本腰を入れてDC分散に取り組もうとしているかわかるでしょう。

3-2.5年で整備する計画

政府のデジタル田園都市国家構想の中では、データセンターの地方分散をこの5年程度で整備する計画も浮上しています。今後5年間で地方に10数か所の拠点を整備する計画を立ち上げています。また海底ケーブルに関しては、3年程度で日本を周回できる規模で整備する予定です。こうすることで、陸揚局の地方分散が促進されるとみられています。

陸揚局とは海底ケーブルの両端に位置する施設を指します。海底ケーブルから陸揚局を経由して、陸上の通信網につながっていく形です。デジタルセンターの地方整備や海底ケーブルの完成には、かなりの資金が必要です。そこで国が金銭面でもしっかりバックアップしていこうというわけです。

4.BCP観点からの対策

4.BCP観点からの対策

DCを地方分散する目的として、BCPの一環があることはすでにここでも何度か紹介しています。BCPの観点から地方にDCを作る場合、地方ならどこでもいいというわけにはいきません。災害に強い地域にDCを作らなければ、いざというときに対応できなくなるからです。

4-1.災害の少ない地域

BCP対策としてDCのリスク分散を検討しているのなら、まず災害の少ない地域に設置する必要があります。日本は災害大国なので、どこでも震災や津波、台風などの自然災害リスクは多少なりともあります。ただしその中でもとくに災害リスクの低い地域を選定しなければなりません。また建物を免震構造にするなど、災害に強い施設を作る必要があります。

4-2.遠隔地を選ぶ

会社の拠点とデータセンターは極力遠くに話すことも、BCPの観点からも必要なことです。もし近くにDCを設置してしまうと、大きな自然災害が起きた場合に同時被災してしまうからです。またリスク分散を目的とするなら、メインセンターを遠隔地で運用するほかにもバックアップサイトをメインセンターとは異なる地方に設置するなどの対策も検討しなければなりません。

4-3.バックアップ用のデータセンターを設置する

すでにデータセンターやクラウドを利用して運用している場合、バックアップ用DCを新規設置するのもおすすめです。バックアップ用DCを設置することで、リスク分散化ができるからです。バックアップがあれば、メインのDCが被災で利用できなくなっても引き続き事業活動を継続できるからです。バックアップサイトのほかにも、別のエリアにDRサイトを運用している企業も見られます。DRとは災害復旧を意味します。自然災害などで、システムが利用できなくなった際の復旧や修復を意味します。自然災害に対するシステムや体制そのものをDRと呼ぶ場合もあります。

4-4.スタッフを常駐させること

DCサービスを遠隔地に設置して、運用できるようにするためにはサポートが受けられるかどうかもチェックしなければなりません。せっかく自社から遠隔地にDCを設置してリスク分散しても、実際に被災した場合に運用サポートが受けられなければ意味がありません。迅速に復旧して事業活動できるように、専門性の高いスタッフが24時間・365日体制でサポートしているセンターを利用すれば、有事の時でも安心です。

5.まとめ

これまで日本では即応性が重視されていたので、データセンターは東京圏に集中する傾向が見られました。しかしこれからの時代は地方に分散することも真剣に検討しなければならないでしょう。もし東京で大規模災害が起こり、DCが機能しなくなった場合深刻な影響が出るからです。各種インフラサービスが提供できなくなるかもしれません。しかも地方の情報もいったん東京圏のDCにもってきて処理し、地方に戻すシステムを採用している事例が多いといえます。もし東京のDCが機能しなくなれば、首都圏だけでなく日本全体にその影響が広がる恐れもあります。このような広域にわたる共倒れを防ぐために、DCのリスク分散でネックになっていたコスト増大問題を国が補助金を出すことで克服しようとしています。

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