【Step2】IDCの詳細理解

失敗しない、データセンター移行の進め方3ステップ

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「データセンターの運用体制を改善したい」「古くなった設備や建物を一新したい」といった課題を解決するのが、データセンターの移行です。一方で、「移転作業を経験したことがなく、どのように進めればいいのかがわからない」「大掛かりになりそうなので、正しい手順で進めたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、データセンター移行の進め方をわかりやすく解説いたします。失敗の許されないプロジェクトをお抱えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

データセンターを移行する3つの方法

データセンターを移行する方法は、以下の3つがあります。

  • ハードウェアの物理的な移動
  • レプリケーション
  • P2V(Physical to Virtual)

1.ハードウェアの物理的な移動

1つ目は、トラックなどを用いてハードウェアを物理的に移動する方法です。移動中は、システムやソフトウェアが使えずサービスが停止するので、利用者の少ない連休や週末などを利用して、一括で実施するのが一般的です。また、大切な情報が入っているハードディスクが振動にさらされるため、データ破損に備えてバックアップを取るなど、必ず冗長化の措置を実施します。

主に、長時間に渡るダウンタイムに耐えられる場合や、移行先のデータセンターとの距離が近い場合に採用されるのが特徴です。

2.レプリケーション

レプリケーションは「複製」の意味で、移行先のデータセンターへ新しくサーバーを設置し、専用回線を通じて移行元サーバーのデータをコピーする方法です。ハードウェアの物理的な移動が発生しないので、ダウンタイムを抑えながら迅速に作業を進められます。ただし、移行先のデータセンターへ、サーバー等のハードウェア機器を新たに構築する必要があるため、費用が高額になりがちな点がデメリット。また、ソフトウェアの動作環境が変わることから、移行計画を綿密に策定する必要がある点に留意が必要です。

3.P2V(Physical to Virtual)

P2V(Physical to Virtual)は、物理的なサーバーを、クラウドなどの仮想環境へ移行することを意味します。データセンターの移行においては、主に専用回線を用いて物理サーバーを仮想サーバーへ変換します。

P2Vは、イチからシステムを構築する必要がないため、移行作業のコストや時間を大きく削減できるのがメリットです。また、今まで使っていたシステムをそのまま使えることから、老朽化への延命策としてよく採用されます。

データセンターを移行する3つの方式

データセンターやシステムを移行する方式には、以下の3つがあります。

  • 一括移行方式
  • 段階移行方式
  • 並行運用方式

一括移行方式

一括移行方式は、現行のシステムから新システムへ、すべての機能を一斉に移行するやり方です。主に、ハードウェアを物理的に移動する方法で用いられます。

一括移行方式のメリットは、コストや作業時間を大きく抑えられる点。システム間の依存関係が複雑で、段階移行や並行運用が難しい場合に採用されることもあります。ただし、移行期間中はシステムが停止するため、ダウンタイムに耐えられる場合にのみ実施可能です。一般的に利用者の少ない休日や祝日などに実施する傾向にあります。

段階移行方式

段階移行方式は、一つの業務単位やシステム単位で、順々に移行していくやり方です。主に、長時間のシステム停止が不可能な場合や、一度に移行するデータやシステムの量が多い場合に採用されます。一斉ではなく少しずつ移行していくので、急なエラーが発生したときでも原因を突き止めやすいのがメリット。ただし、一括移行に比べてコストが高くなりがちな点や、すべての移行完了までに時間がかかりやすい点に注意が必要です。

並行運用方式

並行運用方式は、現行システムのほかに新システムを構築して、比較検証をしながら同時に運用するやり方です。新システムの運用に問題がないと分かったら、その時点で現行システムを停止し、移行を完全に完了させます。

主に、「システムの停止が許されない」「移行リスクを最小限に抑えたい」といった要望を持つ企業が採用する傾向にあるのが特徴。ただし、システムを2つ稼働させるため、通常の倍のリソースが必要になるほか、新旧システムの互換性のチェック・検証の手間がかかるのがデメリットです。

データセンター移行の進め方・手順

データセンターの移行は、下記4つのステップで進めます。

1. 現行システムの洗い出し・調査
2. 移行計画の策定
3. リハーサルの実施
4. 移行作業の実施

1.現行システムの洗い出し・調査

まず、現行システムがどのようになっているのかをひと通り洗い出す作業から始めます。この段階でヌケやモレなく行うことで、工数見積もりや優先順位付けの精度を高めたり、手戻りのリスクを抑えたりすることが可能です。

具体的には、以下をチェックします。

  • サーバー
  • OS
  • ミドルウェア
  • アプリケーション
  • ファイルやデータの形式
  • 運用状況
  • メンテナンス状況
  • トラブルへの対応状況

よく問題になりがちなのが、「システム構成図や接続図がない」「図が古いままで更新されていないので、正しいかどうかがわからない」といった内容です。これに対しては、サーバーの接続設定を一つひとつ確認したり、システム担当者へヒアリングしたりして、しらみつぶしに解決する必要があります。

項目の洗い出しが終わったら、「移転する必要のあるデータやファイルは何か」「現状維持もしくは刷新が必要なシステムは何か」等々の検討を実施します。

2.移行計画の策定

移行計画の策定においては、移行目的やスケジュール、担当者など、プロジェクト実施の詳細な情報をドキュメントとしてまとめます。主に記載すべき内容は、以下です。

<移行概要>
移行の目的・背景、基本方針、大まかな流れ等を記載します。
<移行体制>
移行プロジェクトの専任チーム体制、責任者、役割分担、開発体制等を記載します。
<移行対象>
移行する必要のあるデータやファイル、ネットワーク、業務等を漏れなく記載します。
<移行方法・方式>
レプリケーションやP2Vを選択するのか、移行方式は一括なのか、段階的なのか等の手段を記載します。
<移行時に予測されるリスク・課題>
移行に伴い、どのようなリスクや課題が生じる可能性があるのかを挙げ、それに対する対処法までを記載します。
<移行スケジュール>
予想される工数や期間、タスクを記載します。思わぬアクシデントやトラブルに備えて、ある程度のバッファを設けることが重要です。

移行計画を策定する際は、できるだけ認識のずれや曖昧さをなくしていくよう、「5W1H」を意識して記載することが重要になります。また、特定の技術者でしかわからないような専門用語はできるだけ避け、平易な表現を意識して作成してみてください。

3.リハーサルの実施

続いて、リハーサルを実施します。予想外のタスクや技術的な課題が発生しないかどうかを綿密にチェックし、事前に予定していたスケジュール通りに進むかを確認しましょう。

リハーサルは、本番と同様の時間帯と人員配置で、緊迫感を持って実施することがポイントです。どうしてもリハーサルが困難な項目については、その場で内容を再確認するなどして対応します。

4.移行作業の実施

最後に、移行計画にもとづき移行作業を実施します。メンバーの配置を把握するために体制図を用意したり、緊急のトラブルやアクシデントに備えるために連絡先を共有したりしましょう。

緊急事態に備えて予備の人材を用意しておくなど、余裕のある対応が求められます。

データセンター移行をスムーズに進めよう

この記事では、データセンターの移行方法や方式、具体的な進め方について解説いたしました。

近年は、システムが業務に与える影響が大きくなってきている傾向にあり、稼働停止が事業の停止に直結するようなケースも多く見られます。そのため、正しい手順でデータセンター移行を進めることが肝要です。

進め方で特に重要なのは、システムの洗い出しと計画策定です。事前に関係者間で共通認識を持って進め、ヌケやモレのない移行を目指してみてください。

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