【Step1】IDCの基礎知識

データセンターを地方分散するメリットは?導入企業の事例を解説

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データセンターは、自社で運用中のサーバーを保管する物理的な施設です。運用コスト削減やセキュリティ対策の強化など、多数のメリットが望めます。

ただし、都市部近隣にデータセンターを導入すると、都市部近郊で自然災害が発生した場合、自社拠点との同時被災に直面する可能性があります。同時被災を回避する手段として、データセンターの地方分散が叫ばれるようになりました。

今回の記事では、データセンターを地方分散するメリットや企業事例をまとめていきます。

データセンターとは?

データセンターは、サーバーやネットワーク機器を安全に保管するための物理的な施設です。
外部との通信やデータ処理が安定して実現するよう、大容量電源・冷却装置・高速回線など、さまざまな設備が搭載されています。

データセンターの利用方法はハウジングとホスティングの2種類が存在します。
ハウジングは、データセンター内のラックや空きスペースを借り、自社サーバーを預ける利用方法です。
近年はデータセンター側へ運用・保守を一任できるサービスも増加しており、利便性や安全性が高まっています。

一方、ホスティングは、データセンターが用意したサーバーやネットワーク機器などをレンタルして利用する形です。
ランニングコストや運用負担軽減といったメリットが望める一方、OSに互換性が無い場合もあるため、選択の自由度はハウジングよりも低下します。

データセンターへの注目度が高まる理由とは?

データセンターへの注目度が高まる理由とは

データセンター導入の重要性が高まっている理由には、以下の4点があります。
● 自然災害によるダメージを最小化できる
● セキュリティ対策の強化につながる
● コストを削減できる
● 24時間365日体制で運用可能な体制を構築できる

一つひとつ内容をみていきましょう。

自然災害によるダメージを最小化できる

データセンターの導入によって、地震や火災による被害を最小限に抑えられます。2011年の東日本大震災以降、多くのデータセンターで地震対策が強化されました。

大規模地震によるラック崩壊やサーバー破壊を防ぐため、多くのデータセンターで耐震構造を採用しています。
特に地震が起きる頻度の高い地方では免震床を設置し、建物の揺れや変形を抑える対策を取っているデータセンターも存在します。

また、火災発生時の鎮火には二酸化炭素・フロンガス・炭素を使用するため、スプリンクラーの作動に伴うデータ損傷を心配する必要はありません。

セキュリティ対策の強化につながる

サーバーには機密情報が多数保存されているため、データセンターを導入することでセキュリティ対策の強化が可能です。

提供しているベンダーは、サイバー攻撃への対策としてファイアウォール・IDS/IPS・WAFなどを搭載し、不正アクセスやDDoS攻撃を防いでいます。そのため、セキュリティに関するノウハウや資金面に乏しい企業でもデータセンターを利用することで、情報漏洩リスクを最小限に抑えることが可能です。
一方、館内に生体認証やフラッパーゲートを設け、不審者の侵入を防いでいます。

コストを削減できる

自社でサーバーを保管するよりも、データセンターを利用した方がランニングコストを削減できます。
自社でサーバーの運用や保守をする場合、専用のサーバールームが必要です。

サーバールームはシステムダウンを避けるためにも、温度を常に一定に保たなければならず、電気代などのコストがかかります。
また、自家発電装置の導入やネットワークの冗長化など、バックアップ体制も整備しておく必要もあります。
そこで、データセンターを利用すればサーバーの運用を一任できるため、電気代や設備コストの大幅な削減が可能です。

24時間365日体制で運用可能な体制を構築できる

ベンダーによっては、サーバーの稼働状況を24時間365日監視する「マネージドサービス」を提供している場合もあります。
利用すると深夜や休日にトラブルがあったとしても、管理者がすぐに対応するため被害を最小限に抑えることが可能です。

また、自社のシステム担当者に深夜残業や休日出勤を命じる必要もないため、従業員にとって安心して働ける環境が整い、離職率低下や仕事へのモチベーションアップを望めます。

データセンターを地方分散するメリット

データセンターを地方分散するメリット

データセンターを地方分散するメリットは、以下の2点です。
● BCP対策強化
● バックアップサイトとして活用可能

それぞれ詳しく解説します。

BCP対策強化

データセンターを地方分散するメリットは、自社拠点との同時被災を避けられるBCP対策強化です。

BCP(Business Continuity Plan)対策とは、災害などが起こった際に企業へのダメージを抑える対策のことです。
例えば、首都圏に本社を置く企業が車や電車で通える近距離にデータセンターを設けた場合、首都圏近郊で地震や津波が発生した場合、自然災害の被害をどちらも受ける可能性が高まり、機密情報の消失を招きます。取引先関連の情報や事業に必要なデータを失った場合、すぐに事業を再開させることはできません。

一方、地方分散でデータセンターを導入すると、本拠地の近くで自然災害が発生しても同時被災を回避できるため、最短で事業復旧が望める体制を構築可能です。
BCP対策の強化によって取引先へ安心感を与え、取引量増加やリピート率改善を望めます。

バックアップサイトとして活用可能

すでにデータセンターを導入している企業でも、自社拠点やメインのデータセンターから離れた遠隔地にデータセンターを設立することで、バックアップサイトとして活用できることがメリットです。
緊急時の対策を強化し、組織力向上やブランドイメージのアップにつなげられるでしょう。

データセンターを地方分散する企業の事例を紹介

データセンターを地方分散する企業の事例を紹介

データセンターを地方分散して利用する企業の事例を4つ紹介します。
● 日本IBM株式会社
● ヤフー株式会社
● 道路工業株式会社
● 株式会社BANDAI SPIRITS

データセンターの導入を検討している方は、参考にご活用ください。

日本IBM株式会社

ソフトウェア開発やシステムコンサルティングなど、幅広い事業を展開する日本IBMは、STNetが保有するデータセンター「Powerico(パワリコ)」を香川県に導入しています。

香川県では震度6以上の地震が過去90年間、発生していません。
仮に震度6以上の地震が発生したとしても、Powericoは海岸線から約6km、海抜14.5mの位置に設立されており、津波の影響を受ける可能性を最小限に抑えられます。

Powericoの特徴は、施設の基礎部分を免震構造に仕上げ、耐震強度を高めた耐災害性です。
冗長化された送電経路とUPSを搭載しており、安定した電源供給やサーバーの稼働を見込んでいます。

また、コマンドセンターには実務経験豊富なオペレーターが多数配備され、データセンターの監視や障害発生時の復旧作業などを行っているため、トラブルの影響を最小限に抑えることが可能です。

強固なインフラ環境と高品質なオペレーションサービスが望めるため、日本IBMは2011年からPowericoを利用しています。

ヤフー株式会社

日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を展開するヤフーは、IDCフロンティアが福岡県北九州市に設立した北九州データセンターを使用しています。

北九州データセンターの特徴は、大規模設備の搭載と自然災害のリスクが低い点です。
1個のラックにつき50台前後のサーバーを保管するラックが3,340個もあり、西日本最大のサーバー収容力を誇ります。

敷地面積も約39,900㎡と広大で、新たなデータセンターの増設計画も進んでおり、敷地内でのサーバー増設も可能です。
また、サーバールーム内の空調システムには、水冷空調システムが採用されているため電気代を抑えられます。

さらに、北九州市は地震や津波のリスクが非常に低い地域として知られており、本拠地との同時被災を回避できます。

道路工業株式会社

道路の舗装工事や地盤改良などを手掛ける道路工業社は、NECが展開する北海道データセンターを利用しています。
NEC北海道データセンターの特徴は、優れたコストパフォーマンスです。

72時間連続無給油でも運転可能な非常用発電機を搭載しており、停電時でも安定した電源供給を実現します。
非常用発電機に加え、受電設備やUPSも冗長化されており、負荷の分散とBCP強化を実現しています。

また、大型ファンの採用や自動切替制御機能によって室内の空気循環を高め、空調稼働時間や電気代の大幅な削減に成功しました。
さらに、冷気の損失を防ぐ気流制御技術の導入によって、空調設備の消費電力は従来より約20%削減されています。

株式会社BANDAI SPIRITS

ドラゴンボールやガンダムシリーズなど、人気キャラクターのプラモデルやフィギュアを販売するBANDAI SPIRITSでは、福岡にあるQTnetのデータセンターを利用しています。

QTnetのデータセンターの特徴は、良質なネットワークサービスを提供できる点です。
データセンターと東京のアクセスポイントを20Gbpsで結び、大容量データを低コストで送れる環境を確立しています。

結果、BANDAI SPIRITS社では通信障害の不安を抱えること無く、毎月600GBを超えるデータを移行できていることが特徴です。
また、福岡は自然災害のリスクも少ないため、BCP対策強化にも寄与しています。

まとめ

今回の記事では以下の3点について解説してきました。
● データセンターへの注目度が高まる理由
● データセンターを地方分散するメリット
● データセンターを地方分散する企業の事例

自然災害の被害最小化やサーバーの運用コスト削減に向け、データセンターの必要性が高まっています。
地方分散でデータセンターを導入すれば、自然災害やサイバー攻撃の同時被災を回避でき、BCP強化につなげられるでしょう。

データセンター導入を検討中の方は、今回の記事で挙げた企業事例を参考に、データセンターを導入する地域を選定してみてください。

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