今まで主流だったオンプレミス環境での運用から、新しくクラウド環境へ移行する企業が増えてきています。多くのメリットがある一方、デメリットも存在するので、自社の状況に合わせて検討することが重要です。この記事では、オンプレミスからクラウドへ移行するメリット・デメリット、具体的な移行手順を解説いたします。
企業におけるクラウドの利用比率
総務省が発表した『令和2年 通信利用動向調査報告書(企業編)』によれば、クラウドを「全社的に利用している」もしくは「一部の事業所または部門で利用している」と答えた割合は、全体の68.5%だと報告しています。
「利用していないが、今後利用する予定がある」と答えた企業も合わせると78.6%に及び、合計数値が年々増加しているのが特筆すべき点です。上記のデータから、多くの企業がクラウド移行、もしくはクラウドの導入に前向きになっていることが伺えます。実際にクラウドサービスを利用している理由として、「場所、機器を選ばずに利用できるから」「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」と回答する企業が多い結果となりました。今後も、クラウドを積極的に活用しようと試みる企業が増えると予想されます。出典:総務省『令和2年 通信利用動向調査報告書(企業編)』
オンプレミスからクラウドへ移行するメリット
オンプレミスからクラウドへ移行することに、以下3つのメリットがあります。
- 導入コストや時間を削減・短縮できる
- 運用の柔軟性を高められる
- システムの老朽化を防げる
導入コストや時間を削減・短縮できる
オンプレミスからクラウドへ移行すると、システム導入にかける時間やコストを抑えられます。なぜかというと、クラウドは、事業者が所有するサーバーを使ってサービスを利用する形態のため、ネットワークへアクセスできる環境さえあれば運用できるからです。例えば、カスタマイズをしなければ、アカウント登録を済ませるだけで使いはじめられるサービスがあります。また、初期費用が無料~数万円程度であるケースが多く、大きなリスクを負わずにスタートできるのが魅力です。一方でオンプレミスのシステムを導入する場合、自社内に新しくサーバーを構築するための費用や時間がかかってしまいます。
運用の柔軟性を高められる
クラウドへ移行すれば、機能の追加や障害対応など、運用の柔軟性を高めることが可能です。例えば、ユーザー数やデータ量などのスペックは、事業の規模や成長性に応じて拡張・縮小できます。追加・廃止した機能に応じて利用料金やプランが変動するため、余分な費用が発生しません。また、システムに障害が対応した際は、クラウドベンダーが対応にあたってくれます。今まで障害対応に割いていた人的リソースを削減し、スリムかつ柔軟な運用体制を構築可能です。
システムの老朽化を防げる
「2025年の崖」問題に代表されるように、国内において老朽化したオンプレミスシステムが問題になっています。具体的には、カスタマイズを繰り返したりベンダーサポートが打ち切られたりすることで、改修が困難になったり高額な費用がかかったりするケースです。クラウドへ移行すれば、サーバーの管理は事業者側が行ってくれるため、老朽化問題が発生しません。システムの拡張や移行が必要になったときは、ベンダーへ機能追加や解約の申し入れをするだけで行えるのです。
近年はDXが叫ばれているなか、老朽化したシステムを使い続けること自体が、データ活用や生産性向上を妨げる要因になります。クラウドへ移行することで、競争力向上に向けたシステム基盤の構築ができるのです。
オンプレミスからクラウドへ移行するデメリット
一方で、オンプレミスからクラウドへ移行することに、以下のようなデメリットが存在します。
- 現行のシステムをそのまま移行できないことがある
- カスタマイズ性に劣る
- 現行のシステムをそのまま移行できないことがある
現在使用しているオンプレミスシステムを、使い勝手はそのままで移行したいと考える事業者様もいらっしゃいます。ただし、技術面で困難だったり、既存ベンダーがクラウドの経験やノウハウを持っていなかったりすることもあるので注意が必要です。例えば、「既存のOSやミドルウェアがクラウドに対応していない」「クラウドへの乗り換えにあたって膨大な費用がかかる」といった問題が発生することもあります。そのような場合、まったく新しいクラウドサービスを契約することになり、移行に伴う業務負荷が増大することが懸念されます。
カスタマイズ性に劣る
クラウドは、オンプレミスよりもカスタマイズ性に劣るのがデメリットです。具体的には、機能追加や他システムとの連携において柔軟さが失われる傾向にあります。例えば、自社特有の業務フローに合わせて詳細なカスタマイズを施すことは、標準機能が定まっているクラウドでは困難です。また、クラウドサービスの仕様によっては、他システムと連携が難しくなる場面がでてきます。どうしてもクラウドでは満たせない要件がある場合、クラウドやオンプレミスを組み合わせて使う「ハイブリッドクラウド」の採用で解決できることがあります。
オンプレミスからクラウドへの移行手順
以下では、オンプレミスからクラウドへ移行する際、どのような手順で進めればいいのかを解説いたします。
1.現状把握・分析
最初に、現状把握と分析を行います。現在利用しているオンプレミスシステムの利用状態や管理方法を把握し、クラウド化をすべきかどうかを検討します。具体的には、以下の項目を整理しましょう。
システムの種類
システムのドキュメント
ハードウェア資産
ソフトウェア資産
現在、自社が直面している業務課題の重要度や緊急度と照らし合わせて、そのシステムをクラウドへ移行すべきか、移行するのならどの範囲で行うのかを判断します。
2.移行計画の策定
続いて、移行計画を策定します。具体的には、以下の項目を決定しましょう。
- 移行スケジュール
- データ移行の方法
- 移行プロジェクトの組織体制
- 必要な人員の数
- 移行作業にかける費用
移行計画は、途中でトラブルが発生することも踏まえ、余裕を持ったスケジュールと費用で策定するのがポイントです。また、プロジェクトの単位ごとにマイルストーンを設定しておくと、一つひとつの作業で明確な目標を持って進められます。
3.計画の実施
最後に、計画した内容を実施します。具体的には、以下の手順で進めましょう。
1.テスト | ・クラウドを試験的に運用、もしくは本番と同様のテスト環境で運用を開始する ・問題が見つかったら速やかに修正し、再テストを行う |
2.移行本番 | ・移行本番 ・事前に策定した計画に基づき、移行作業を実施する ・プロジェクトの進捗管理を行う |
3.移行後のチェック | ・稼働後、一定期間を経て通常通り業務が遂行できているかをチェックする ・ユーザーからの問い合わせへ対応する |
クラウドへの移行プロジェクトは、クラウドベンダーのみならず、情報システム部門や各種事業部門など、多くの関係者が関わりながら進めるのが通常です。そのため、事前に情報共有や意思決定の体制を整えておくことが重要になります。
オンプレミスからクラウドへの移行を進めよう
この記事では、オンプレミスからクラウドへ移行するメリット・デメリットや、移行手順を解説いたしました。クラウドにはいくつかのデメリットがありますが、多くの企業が活用を進めているのが現状です。実際に移行を進める際は、現状分析・計画策定・実施と、正しい手順を踏んで進めることがポイントになります。ぜひこの記事を参考に、オンプレミスからクラウドへの移行を前向きに検討してみてください。
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