総務省が発表した「令和3年通信利用動向調査の結果」の資料によると、クラウドサービスを利用している企業は全体の70.4%に達し、年々増加傾向にあると報告しています。クラウドが主流になりつつある昨今、社内サーバーからの移行を検討されている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、社内サーバーをクラウド化するメリットやデメリットを解説します。老朽化や保守切れなどで次の移行先を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
参考:総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
クラウドサーバーと社内サーバーの比較
クラウドサーバーと社内サーバー(オンプレミス)は、コストや運用負担、カスタマイズ性などに違いがあります。以下の表で、具体的な違いを紹介します。
クラウドサーバー | 社内サーバー(オンプレミス) | |
コスト | ◯
初期費用がほとんどかからない |
△
機器の購入代や、運用・保守の人件費がかかる |
運用負担 | ◯
ベンダーへ機器管理を任せられる |
×
運用・保守や障害対応、改修までをすべて自社で行う必要がある |
拡張性 | ◯
必要に応じてリソースを増減できる |
△
リソースの増減に時間やコストがかかる |
カスタマイズ性 | △
ベンダーが用意するハードウェア・ソフトウェアの使用が基本 |
◯
要件に合わせて好みのハードウェア・ソフトウェアを調達できる |
災害対応 | ◯
地理的に安全なデータセンターで稼働させられる |
×
安全な拠点への移設作業が必要になる |
社内サーバーをクラウド化するメリット
社内サーバーをクラウド化する最大のメリットは、以下の2点です。
- 運用負担やコストを削減できる
- 運用の柔軟性を高められる
運用負担やコストを削減できる
社内サーバーをクラウド化すれば、運用にかける負担やコストを大きく削減可能です。例えば、社内サーバーの場合、以下のような手間や費用がかかります。
【運用負担】
- セキュリティ対策
- 稼働状況や使用状況のモニタリング
- 定期メンテナンス
- 障害対応
【運用コスト】
- 運用・保守にかける人件費
- サーバールームの賃料
- 稼働や冷却で使う電気代
- 機器に不具合が発生した際の修理費
対してクラウドサーバーであれば、機器の運用・保守をすべてベンダーが行うため、管理負担を大きく抑えられます。サーバーの維持費は「利用料」の形で一本化されるうえ、必要なリソース分だけを契約すれば、全体として安くなる傾向にあるのです。
運用の柔軟性を高められる
クラウドサーバーを用いれば、社内サーバーのときよりも業務の柔軟性を高められます。例えば、オンプレミス環境でリモートワークへ移行する場合、閉域網へ接続するためにVPN環境を構築しなければなりません。一方のクラウドは、インターネット環境さえあればどこからでも接続できるため、容易に進められるのです。
また、メモリ・ハードウェア・CPUといったリソースを増減させたい場合、クラウドであればプラン変更をするだけで完了します。他方、社内サーバーだと、必要とするリソースが変更されるたびに、都度、改修作業を実施しなければなりません。上記のように、業務を運用するにあたっての柔軟性は、クラウドに分があります。
社内サーバーをクラウド化するデメリット・課題
社内サーバーをクラウド化することには、以下のデメリットが存在します。
- カスタマイズ性に劣る
- パフォーマンスが低下することがある
カスタマイズ性に劣る
クラウドサーバーは、ベンダーが提供するサービスを用いて運用する形態のため、カスタマイズの柔軟性に乏しいのがデメリットです。例えば、使用できるプログラミング言語や開発環境、データベースなどが、限られた種類のでしか使えないことがあります。また、クラウドサーバーの仕様やスペックだと、自社の既存システムと互換性がないために、連携が難しい場合があるのです。カスタマイズ性を維持しながらクラウドを導入したい場合、「IaaS」と呼ばれる提供形態がおすすめです。IaaSでは、ハードウェアインフラのみをサービスとして利用するため、その他のOSやミドルウェア、アプリケーションなどを自社で自由に選択・構築できます。
パフォーマンスが低下する可能性がある
社内サーバーは、自社のネットワークを使って通信するため、常時安定したパフォーマンスを発揮します。一方のクラウドは、外部のインターネット回線を通じてアクセスするため、通信環境の変化により速度が落ちたり接続が途絶えたりすることがあります。
また、ベンダー側のミスや過失により、クラウドサーバーに通信障害が発生するリスクがある点に注意が必要です。これに対し各ベンダーは、障害の発生に備えてシステムを冗長化したり、「SLA(Service Level Agreement)」を公表して高い稼働率を保証したりするなどの対策を施しています。
インターネット回線によるパフォーマンス低下はやむを得ませんが、サーバーの稼働に関しては維持・向上できる可能性があります。そのため、各ベンダーのサービス内容をよく確認してみるのがおすすめです。
社内サーバーのクラウド化を検討する際のポイント
社内サーバーのクラウド化を検討する際は、以下の2点を社内で実施しましょう。
- 維持コストを試算する
- セキュリティ要件を確認する
維持コストを試算する
社内サーバーのクラウド化を検討する際は、移行後にどれくらいの維持コストがかかるのかを試算しましょう。一般的なクラウドサーバーであれば、「従量課金のみ」もしくは「基本料金+従量課金制」を採用しているケースが多いです。例を挙げると、以下のような費用項目があります。
要素 課金単位
- マシンスペック(CPU・メモリ) 定額もしくは時間単位
- ストレージの使用量 GB数単位
- データ転送量 GB数単位
例えば、マシンスペックの場合「15円/時間」、ストレージだと「4円/GB」、データ転送量であれば「14円/GB」のように料金が加算される仕組みです。具体的に費用をシミュレーションしたい場合は、社内で以下の項目を検討しましょう。
・クラウドサーバーの利用目的(ECサイト運営、業務アプリ構築など)
・CPUやメモリの必要数
・ストレージやデータ転送の予定量
クラウドサーバーを提供するベンダーのなかには、料金のシミュレーションツールを公開しているところもあります。気になる方は、ぜひ調べて活用してみてください。
セキュリティ要件を確認する
社内サーバーのクラウド化を検討する際によく議題に上るのが「セキュリティ」の問題です。今までオフィス内で保管していたデータを、外部のインターネット環境へ晒すのは、物理的にも心理的にも不安が残るものです。例えば、安全でないAPIや、公開されたログイン画面から不正にアクセスされるリスクがあります。これに対しクラウドベンダーは、データ・通信の暗号化や、アクセス制御の強化といった対策を進めています。自社で扱うデータやシステムにどれほどのセキュリティ要件を課しているのか、クラウドではそれに対応しきれるのかをよく確認するようにしましょう。
社内サーバーのクラウド化を検討してみよう
この記事では、社内サーバーをクラウド化するメリット・デメリットを中心に解説しました。クラウドサーバーには、コストや運用負担、拡張性などに利点がある一方、パフォーマンスやセキュリティなど超えるべき課題がいくつかあります。まずは、社内にあるインフラやソフトウェア、データを見直し、クラウド移行が可能なもの、そうでないものを分類してみましょう。ぜひこの記事を参考に、自社のクラウド活用を進めてみてください。
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