以前のバックアップは、社内ネットワークや外付けハードウェアにデータを保管するのが一般的でした。しかし近年は、コストやセキュリティ、BCP対策の観点から、クラウドバックアップを採用する企業が増えてきています。
この記事では、クラウドバックアップの概要やメリット・デメリット、法人におすすめのサービスを紹介します。
クラウドバックアップとは?
クラウドバックアップとは、ベンダーが提供するクラウドサーバーやクラウドストレージサービスへ、データやファイルを複製・保管するバックアップの形式をいいます。主に、バックアップベンダーが提供するクラウドバックアップサービスを利用する方法と、無料から使えるクラウドストレージサービスを活用する方法の2種類があります。それぞれの違いは、以下の通りです。
バックアップベンダーが提供するサービス | クラウドストレージサービス | |
代表的なサービス | Arcserve UDP、UCHIDAクラウドバックアップサービス など | Dropbox、OneDrive、Google Drive など |
主な目的 | バックアップ | データ・ファイル共有、業務効率化、コミュニケーション など |
主な利用者 | 法人 | 個人 |
個人であれば、クラウドストレージサービスでも問題なくバックアップを行うことが可能です。一方、法人においては、従業員が誤ってバックアップデータを削除・上書きしてしまうリスクがあるため、クラウドストレージサービスではなくバックアップ専用のサービスを導入するケースが多いです。
以下では、バックアップベンダーが提供する、法人向けのクラウドバックアップサービスに絞って解説します。
クラウドバックアップとオンプレミスバックアップの違い
クラウドバックアップとよく比較されるバックアップ方法に「オンプレミスバックアップ」があります。クラウドバックアップは、インターネット回線を通じてバックアップデータを保管するのが特徴です。バックアップデータを作成・復元するバックアップサーバーは、ベンダーが所有する複数のデータセンターで稼働しているのが一般的です。
対してオンプレミスバックアップは、ローカルサーバーや自社データセンターで稼働しているバックアップサーバーにてバックアップデータを作成・保管します。構成次第では、LAN回線だけでも完結させられるのが大きな特徴です。
クラウドバックアップのメリット
オンプレミスバックアップと比べて、クラウドバックアップにはどのようなメリットがあるのでしょうか?具体的には、以下の4つが挙げられます。
- 初期・運用コストが安い
- 容量の拡張が容易に行える
- ランサムウェアの感染や情報漏洩のリスクを軽減できる
- 災害対策が行える
初期・運用コストが安い
1つ目に、初期コストや運用コストが非常に安い点が挙げられます。オンプレミスの場合、以下のような費用がかかります。
【初期コスト】
・機器や回線(サーバー・LANケーブルなど)の購入費用
・サーバーを設置するのに必要な場所代
【ランニングコスト】
・サーバーの空調にかかる電気代
・保守やメンテナンスにかける人件費
クラウドバックアップであれば、機器や回線、データセンターはベンダーが用意してくれ、さらに運用も行ってくれるので、内部コストを大幅に削減できます。クラウドは、月ごとの基本料金や従量課金などで費用が発生しますが、オンプレミスでかかる初期費用や毎月の人件費などを考慮すると、安く済むケースが多いです。
容量の拡張が容易に行える
2つ目に、オンプレミスよりもバックアップ容量の拡張が容易に行える点です。オンプレミスバックアップの場合、容量が足りなくなったときに、データを圧縮したりサーバーを増設したりする必要があるため、コストと時間がかかります。
対してクラウドバックアップであれば、ベンダーへ一言連絡をするだけで容量を増やすことが可能です。自社で扱うデータ量の増減に合わせて、リソースを柔軟に変えられるのが魅力です。
ランサムウェアの感染や情報漏洩のリスクを軽減できる
3つ目は、ランサムウェアの感染や、人為的なミスによる情報漏洩のリスクを軽減できる点です。特に最近のランサムウェアは、一度社内ネットワーク内に侵入すると、接続可能なデータや端末へ一斉に攻撃する傾向にあります。オンプレミスバックアップの場合、バックアップデータにまでも被害が及ぶ可能性があるのです。
そこで、データの保管場所を分散するために、磁気テープや外付けHDDといった外部ハードウェアにてバックアップを行う企業が多くいらっしゃいます。ただし、そのような場合でも、従業員によるハードウェアの紛失や情報漏洩のリスクは避けられません。
対してクラウドバックアップでは、ベンダーが所有するデータセンターへバックアップデータを預けられるので、ランサムウェアの感染を防げるほか、保管場所の分散が実現できます。
災害対策が行える
4つ目は、災害対策のために企業が実施する「BCP(事業継続計画)」や「DR(ディザスタリカバリ)」を強化できる点です。BCPとは、災害などの緊急事態が発生した際でも、企業が事業を継続するために立てる計画を指します。一方のDRは、自然災害が発生した際に、復旧・回復するためのシステムのことです。
オンプレミスバックアップの場合、バックアップデータと運用データを、自社オフィスや近隣のデータセンターに置くケースが多いため、自然災害が発生するとすべてが消失してしまう恐れがあります。対してクラウドバックアップでは、ベンダーが所有する遠隔地のデータセンターでバックアップデータを保管できるため、災害発生時などのリスク分散になるのです。
仮に遠隔地のデータセンターが被災してしまったとしても、ベンダーが所有する他拠点のバックアップサーバーから、迅速に復旧することが可能です。
クラウドバックアップのデメリット
クラウドバックアップでは、インターネット回線を使用する必要があるため、転送速度が低下しやすいデメリットがあります。バックアップデータのサイズや、自社の回線状況によっては、業務運営に支障が出てしまう可能性も考慮しなければなりません。
また、WAN回線に障害が発生した場合、バックアップや復旧を行うのに多大な時間を要してしまいます。インターネット回線に関するリスクは、クラウド特有のデメリットであることを理解しておきましょう。
法人向けのおすすめクラウドバックアップサービス
ここでは、法人におすすめのクラウドバックアップサービスを3つ紹介します。
UCHIDA:クラウドバックアップサービス
UCHIDAブランドで展開する株式会社内田洋行は、法人向けにクラウドバックアップサービスを提供しています。国内7拠点のデータセンターへバックアップデータを分散保管できるのが特徴です。本サービスでは、「消失訂正符号」の技術を用いてデータを約2倍の容量に冗長化、100以上に断片化した上で均等に分散保管しています。さらにAES・ABEによるデータ暗号化、SSLによる通信暗号化に対応しているので、セキュリティ面で安心です。
導入は、専用のソフトウェアをインストールするだけなので非常に簡単です。BCP対策として、低コストでクラウドバックアップを行いたいと考える法人におすすめです。
URL:https://www.uchida.co.jp/it/products/cloudbackup/index.html
TSUKAERU.NET:使えるクラウドバックアップ
使えるクラウドバックアップは、使えるねっと株式会社が提供するクラウドバックアップサービスです。同社は、ファイルだけでなく、アプリケーションやOS、ユーザーアカウントまでも一気にバックアップする「イメージバックアップ」に対応しているのが特徴です。ファイルのみをバックアップする方法と比べて、復旧にかける時間を大幅に短縮できます。
さらに、ランサムウェアの感染を検出・遮断するAIテクノロジー「アクティブプロテクション」を搭載しています。Petya、WannaCry、Osirisといった既知のランサムウェアだけでなく、未知の脅威にまでも有効です。
URL:https://www.tsukaeru.net/cloud-backup
Acserve:Arcserve UDP
Arcserve UDP(Unified Data Protection)は、Arcserve社が提供する統合バックアップ・リカバリソリューションです。データの所在がオンプレミス・クラウドに散在していても、それらを統合してバックアップできます。同社がバックアップ専業ベンダーとして得てきた経験と専門知識を活用し、企業を深くサポートできるのが特徴です。主に、中堅~大企業で採用しやすいクラウドバックアップサービスです。
URL:https://www.arcserve.com/jp/products/arcserve-udp
クラウドバックアップを導入してデータの安全を確保しましょう
この記事では、クラウドバックアップの概要、メリット・デメリット、おすすめのサービスを紹介しました。ランサムウェアや災害の脅威にさらされる昨今、クラウドバックアップの重要性が高まってきています。
ぜひ自社でもクラウドバックアップを導入し、クラウド活用やセキュリティ対策を進めてみてください。
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